大判例

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仙台高等裁判所 昭和27年(う)809号 判決

刑事訴訟法第二百三十五条第一項にいわゆる「犯人を知る」とは犯人の氏名、年齢、職業、住居等を確知するの必要はないが、その何人であるかを特定しうる程度、即ち犯人を他の者と甄別しうる程度に認識することを要すると解すべきである。けだし強姦罪のようないわゆる絶対的親告罪の告訴は、犯罪事実そのものを申告して犯人の処罪を求める意思表示をすれば足り、必ずしも犯人を指定することを要しない。しかし犯人が何人であるかの点は、之に対し告訴するかどうかの意思決定をなすにつき重要な意味をもつものであること勿論である。さればこの種の犯罪については罪となるべき事実を知つた日から告訴することが出来るが、法定の告訴期間は犯人を知つた日から進行するものと解すべきである。よつて本件につき是を観るに、被害者N子が同女に対する強姦事件の犯人の一人が宮古市末広町魚屋高平の息子であることを知つたのは遅くとも昭和二十五年秋頃までの間であることは窺知しうるところであるが、右高平の息子は二人おり、右秋頃までに知りえた犯人は高平兄弟の孰れなりや判明せず、否寧ろ被告人でなくその兄とのみ思つていたことが認められ、被告人が犯人であることを諒知したのは昭和二十六年八月頃であることを認めうるのである。然らば被害者N子の昭和二十五年頃までの状態では、法定の告訴期間の始期となる犯人を知つた、即ち犯人を他の者より甄別して特定しうる状態の認識があつたものと認めることは出来ない。従つて被害者N子は少くとも昭和二十五年秋頃までに犯人を知つたとの前提の下に告訴期間徒過により告訴権は消滅したとなして本件公訴を棄却した原判決は、畢竟法律の解釈を誤り、判決に影響を及ぼすべき擬件の誤を冒したものというべきであるから破棄を免れない。

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